小原善作モデル小篠甚作朝ドラカーネーション小篠綾子の父

2024年9月9日2024年9月18日

小原善作のモデル・元ネタは「コシノ洋装店ものがたり」から

朝ドラ「カーネーション」に登場する小原糸子（尾野真千子）の父・小原善作（小林薫）は、小篠綾子の父である小篠甚作（こしのじんさく）がモデルになっていると考えられます。

小篠綾子の自伝を綴った「コシノ洋装店ものがたり」では6章で構成されたお話のうち、「第1章女にしか出来ないこと」・「第2章父と娘の二人三脚」の2章を使って、若き日の小篠綾子と小篠甚作の思い出が語られています。

「コシノ洋装店ものがたり」の「第1章」と「第2章」を読んでいると、この本に登場するエピソードや小篠甚作の人物像が、そのまま朝ドラ「カーネーション」と小原善作のキャラクターになっていると考えられます。

「コシノ洋装店ものがたり」の小篠綾子と小篠甚作のやり取りが、ほとんどそのまま朝ドラ「カーネーション」の小原糸子と小原善作のやり取りの元ネタになっているエピソードを3つ紹介しましょう。

1. 小原糸子の幼少期

「コシノ洋装店ものがたり」からの引用

その頃、父は呉服屋の番頭をしていました。実家は播州（兵庫県）でかなり田地田畑を持っていたらしいのですが、他人の保証人になったことから没落し、追われるように母方の実家のある岸和田に移り住んだと言います。私の下には妹が三人いて、祖母、母、娘四人の女六人と、男は父だけという典型的な女系家族でした。
当然のことながらあまり裕福な暮らしとは言えませんでした。しかし、父は何をするにも一徹で、そのうえ、頑固で職人肌の人でしたから、万事がすべて、父の意見が小原家の法律となっていました。
「コシノ洋装店ものがたり」18ページより

朝ドラ「カーネーション」のエピソード

確かに朝ドラ「カーネーション」の小原善作は若い頃に呉服屋の番頭をしており、出入りをしていた神戸の松坂家の一人娘で妻となる千代（麻生祐未）と駆け落ちをしたという設定になっています。

また善作は売掛金の回収もろくにできず、商売の仕方もまずく、「小原呉服店」は年を経るごとに経営が傾いてくというストーリーになっています。

そのくせ家庭内では内弁慶といっていいほどで、糸子が何か口答えをするたびにどつき倒すという「暴君」ぶりを発揮します。

2. 女学校中退からパッチ屋修行時代

「コシノ洋装店ものがたり」からの引用

父に話（女学校を中退してパッチ屋に修行する件）をしてから一ヶ月後、私が「許して」と言うと、さすがの父も根負けしたのか、意外な言葉が返ってきました。
「おまえに、親孝行なんかしてもらおうとは思てへん。けど間違うても女学校中退やと思たらあかん。店へは勉強にしに行くもんや！働きに行くのと違うぞ！そう思えるんやったら行ってきてええがな」
と珍しく何度も「勉強やぞ、勉強やぞ」と私に同じ言葉を繰り返して言うのでした。
「コシノ洋装店ものがたり」33ページより

朝ドラ「カーネーション」のエピソード

岸和田ではまだ珍しかったミシンを扱っている「桝谷パッチ店」を見つけ女学校を辞めて、パッチ屋の職人になりたいと善作に願い出て蹴り倒される糸子。小篠綾子の実話でもあったように何度も拝み倒して、糸子は善作からなんとか「桝谷パッチ店」の職人見習いになることを許されます。

その新しい門出の朝、ミシンに触りたくてウキウキして出勤しようとする糸子を横目に、苦虫を噛み潰したような顔をした小林薫さん扮する小原善作は、糸子に向かってこう言い放ちます。「… お前働きに行くんちゃうぞ。勉強やぞ勉強」。

3. 根岸先生の弟子時代

「コシノ洋装店ものがたり」からの引用

父にとっては仕事のために覚えた謡（うたい）でも、私にとっては何の役にも立ちません。子供の頃から謡を習う人があると決まって、「これも勉強」と私たちも一緒に習わされるのです。子供に謡などわかるはずもありません。まして正座を何時間もさせられるものです。痺れた足で立ち上がり、二階から階下に降りるのに何度も転げ落ちたものです。
（中略）いつもなら沢山の人が習っているのに今日は一人だけです。それも父に向かい合って真剣に謡っています。「物好きな」と思った瞬間、その顔を見て驚きました。
なんとその人は、根来先生だったのです。

「コシノ洋装店ものがたり」48ページより

朝ドラ「カーネーション」のエピソード

ミシンの扱いに慣れた糸子がぜひ洋裁を習いたいと、東京から大阪・心斎橋に派遣された「スティンガーミシン」の根岸良子（財前直見）。糸子は洋服の作り方を教えてもらおうとするも、根岸先生は「自分はミシンを実演販売をするために扱い方を教えるだけの講師であるから」といったんは断られます。

しょんぼりした顔をして糸子が岸和田に戻ってくると、何と善作の謡の稽古に根岸良子の姿が。前作が根岸に謡の個人レッスンをする代わりに、根岸は1週間、小原家に泊まりこんで洋裁を教えてくれることになったのです。

「コシノ洋装店ものがたり」の「根来先生」と言う人物は根来久子のことであり、根岸良子のモデルとなっている女性であると考えられます。

朝ドラカーネーション根岸良子（財前直見）のモデルは根来久子

小原糸子・青年期のエピソードもたっぷり

「コシノ洋装店ものがたり」を読んでいると、「パッチ大量受注事件」・「洋服仕立て料未収事件」・「おばあちゃん以外の家族全員失踪事件」など本のエピソードが、そのまま朝ドラ「カーネーション」の元ネタとなっているエピソードが語られています。「コシノ洋装店ものがたり」を読んでしまうと「小原善作のモデルは小篠甚作ではない」と言うことができなくなるでしょう。

朝ドラ「カーネーション」に興味のある方は、ぜひ「コシノ洋装店ものがたり」を読んでみることをおすすめします。