小原千代のモデルは小篠ハナ 小篠綾子の母
朝ドラ「カーネーション」で麻生祐未さんが扮する小原千代のモデルは小篠ハナです。小篠ハナとは日本のファッションデザイナーの草分けとなった小篠綾子の母親です。
小篠綾子の自伝書である「コシノ洋装店ものがたり」の「第一章 女にしか出来ないこと」では小篠綾子の出生についてこう書かれています。
大正二年六月十五日、私は小篠甚作、ハナの長女として大阪の岸和田で生まれました。
「コシノ洋装店ものがたり」18ページより
小原糸子(尾野真千子)のモデルは小篠綾子
小原善作(小林薫)のモデルは小篠甚作
カーネーション 小原千代のエピソードを「コシノ洋装店ものがたり」から
小篠綾子は「コシノ洋装店ものがたり」の冒頭で「自分の母親は小篠ハナである」と自分で語っています。よって小原糸子の母・小原千代は小篠ハナと言って差し支えはないと思いますが、「コシノ洋装店ものがたり」の小篠ハナの言動をより深く読んでいると、「カーネーション」の小原千代は小篠ハナがモデルとなっていると確信できます。
小篠ハナは綾子の妹を諭す
「コシノ洋装店ものがたり」では小篠綾子が女学校を中退してパッチ屋で修行しているとき、家の中で母・ハナと妹の間でこんな会話が聞こえてきたと言います。
「おかあちゃん、うち、着物が欲しい。」
「そんなわがまま言うもんやない。お父ちゃんに叱られるで…」
と言われて、いつもなら黙る妹がこの日は珍しく母に逆らいました。
「お姉ちゃんはええな、好きなことばっかりやって…」
「…」
「なんでも自分の思うとおりにしてるもんなぁ…」
いつもなら口答えを許さず叱りつける母が、この日ばかりは黙って聞き、怒らず、静かに一言だけ言いました。
「ほな、あんたもお父さんに好きなことをさしてと言いなはれ」
「…そんなこと言うたら、お父ちゃんに叱られる」
と妹は口ごもりながら言うと、押し黙りました。
「ほら、見なはれ、好きなことはするのは大変やねんで…」
と母は妹を諭していました。
「コシノ洋装店ものがたり」38ページより
小原千代は妹・小原静子を諭す
実はこの母と妹の会話をそっくり描写したシーンが、朝ドラ「カーネーション」の「第3週 熱い思い」(第15回)でも糸子の母・千代と妹・静子(柳生みゆ)の間で登場します。
静子が千代に着物をねだり、千代があきらめさせようと諭しているようだ。
「…あかん。あんなぜいたくな着物、あんただけに買えまへん」
「ええなあ、糸子姉ちゃんは。糸子姉ちゃんばっかし新しい着物着れるし、好きなことさしてもらえるんやもん。学校やめたいゆうたらやめさしてもうて、働きたいゆうたら働かしてもうて」
糸子を引き合いに出して八つ当たりを始めた静子に、ややあって千代が言った。
「そないうらやましいんやったら、あんたも姉ちゃん見習うたらよろし。こないことでお母ちゃんにぐじゅぐじゅ言わんと、自分でお父ちゃんに着物買うてくださいと頭下げといで」
「…そんなこと、うち、ようせん…」静子の声が細くなる。
「好きなことをするんはなあ、見てるほど楽とちゃうんやで…」「NHK連続テレビ小説 カーネーション 上」 64ページより
「カーネーション」の小原千代と「コシノ洋装店ものがたり」の小篠ハナ 相違点
このように小原千代のモデルは小篠ハナであると考えられますが、「コシノ洋装店ものがたり」の事実と「カーネーション」のお話では相違点も見られます。
「コシノ洋装店ものがたり」では小篠ハナの家族には大学卒がインテリが揃っていたと言います。明治時代や大正時代の大学卒といえば、平成や令和の現代と違って必ず立身出世が約束されたエリートばかりです。
大金持ちとはいかないまでも、政府の高級官僚や大企業の経営幹部などになることが約束されている大学卒の人が、日常の生活について経済的に困ることはなかったと思います。
一方、「カーネーション」の小原千代は、紡績会社で財を成した神戸の富豪・松坂家の娘であると言う設定です。富豪の娘ですから何不自由なく育てられたことになっていますが、富豪の一族と大学卒のインテリの家系では、やや毛並みが異なるのではないかという印象があります。