朝ドラ カーネーション 財前直見さん扮する根来久子のモデル
朝ドラ「カーネーション」に登場する東京のスティンガー・ミシンから心斎橋に派遣されたミシンの講師・根岸良子(財前直見)のモデルは、根来久子(ねごろひさこ)と考えられます。
小篠綾子と根来久子の出会い 「コシノ洋装店ものがたり」より
朝ドラ「カーネーション」のヒロイン・小原糸子のモデルとなった小篠綾子の自伝「コシノ洋装店ものがたり」の「第一章 女にしか出来ないこと」では小篠綾子と根来久子の初めての出会いについて、このように説明されています。
でも、指をくわえて待っているわけにもいかず、なんとかしなくてはと思っていた時、偶然にも東京のシンガーミシンという会社が、購入者にサービスとして婦人服の簡単な仕立ての技術を無料で教えているという話を聞き込みました。都合の良いことに、その先生の一人で松屋にも派遣されていた根来久子(ねごろひさこ)という先生が、和歌山の粉河にある実家へ帰ってこられていて、シンガーのミシンを紹介しているといいます。
私はこの話に飛びつき、矢も盾もたまらず、早速その先生のお宅に行き、専門的に教えてほしい直談判をしました。しかし、私の熱意とは裏腹に、その先生からは「ふつうの人と同様に教えることは出来ても、他の人の手前、個人的に専門的なことは教えられない」と断られてしまいました。「コシノ洋装店ものがたり」 45ページ
根来久子は小篠甚作の謡の弟子だった
この後も小篠綾子は鉄道に乗って片道2時間もかけて和歌山の粉河に通いましたが、結局教えてもらえるのは、ミシンの一般的な使い方だけで洋服の作り方まで及ばないという残念な内容でした。
しかしここで偶然が起こります。小篠綾子の父・甚作は「小篠呉服店」の経営だけでなく、自宅で多くの弟子たちに謡(うたい)の稽古をしていたのです。その弟子たちの中には、なんと根来久子も混じっていました。自分の謡の師匠が小篠綾子の父であることを知ると、「師匠の娘」ということで特別にと洋服作りの個人指導を引き受けたそうです。
朝ドラ カーネーション 小原糸子(尾野真千子)のモデル 小篠綾子
朝ドラ カーネーション 小原善作(小林薫)のモデル 小篠甚作
小原糸子と根岸良子の出会い 朝ドラ カーネーションより
木之元電キ店で「スティンガーミシン」の実演販売にやってきた根岸良子は、木之元栄作(甲本雅裕)から小原糸子を紹介されて心斎橋でも実演販売をしていると教えてくれました。
心斎橋のスティンガーミシンで愕然とする糸子
翌日、喜びいさんで心斎橋のミシン販売店「スティンガーミシン」にやってきた糸子は、ミシンを買う客以外はミシンの使い方を教えられないと伝えられ愕然としますが、さらに驚いたことは、根岸良子が講義する内容です。すでにパッチ屋で3年間の修行を終えていた糸子にとっては、内容が初歩的すぎたことでした。
「あのう。すんません、洋裁はいつごろ教えてもらえるようになりますか?」
「ごめんなさい。私は東京からミシンの講師としてここに呼ばれているので、教室ではあれ以上のことはお教えできないの。」
「ええ!? 洋裁は教えてもらえへんのですか?」
簡単なスカートなどじゃない、本当の洋裁の勉強をしたいのだと糸子は必死に訴えたが、この教室はミシンを買った客に使い方を教えるためのものだから、と断られてしまった。「NHK連続テレビ小説 カーネーション 上」 87ページより
小原善作が根岸良子に土下座をして個人指導の依頼をする
実在のモデル・小篠綾子と同じく、洋裁の個人指導を断られてしまった糸子。
実は朝ドラ「カーネーション」ではこの後、糸子の父・善作が心斎橋に乗り込み根岸良子の前で土下座をして、洋裁の個人指導を頼んだことで糸子は根岸良子から一週間の洋裁の個人指導を受けられるようになりました。
「コシノ洋装店ものがたり」では小篠甚作が根来久子に土下座をして小篠綾子の個人指導を頼んだという記述はありません。
「コシノ洋装店ものがたり」と朝ドラ「カーネーション」の共通点
ですが朝ドラ「カーネーション」でも根岸良子が小原糸子の洋裁の個人指導を引き受ける見返りとして、善作が根岸に謡の稽古を個人でつけることになっています。
「コシノ洋装店ものがたり」も朝ドラ「カーネーション」も、父が娘の洋裁作りに尽力したという点では共通しているようです。